ハンチントン病の症状に怯え、遺伝子の継続に悩む姿 「光射す海:鈴木光司」を読んだ

どれもたいした理由にはならない。
なんとくだらない人生を送っていたのだろう。
自分がひたすらちっぽけな存在と感じられたが、
それでも死にたくはなかった。

小説を読んだことによって、初めて知ることってけっこうある。

例えば、
普段あまり関わることのない病気なんかもそのひとつ。

ましてや遺伝性の病気なら、
それは知るよしもない。

光射す海 (角川文庫)
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鈴木 光司
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以前に読んだ、東野圭吾の時生(トキオ)では、
グレゴリウス症候群という難病がでてきた。
(この小説もかなり感動する名作。)
これも遺伝性の難病という設定になっていたが、
これは東野圭吾が創作した架空の病気。

が、本作品ででてくる、 ハンチントン病はちがう。
実際に存在する病気だ。

日本人の50万人に1人がかかるという、
遺伝性の難病らしい。

ざっくりあらすじ

ある精神科医のもとに
自殺未遂の謎の女性がやってきた。
言葉を失った謎の女性・・・。それは主人公の恋人だった。

主人公は、その恋人がもつトラウマを知らなかった。
そのトラウマとは、ハンチントン病の父親をもつということ。
患者の子供は、2分の1の確率で発病するということ。

知らなかったからこそ、
恋人の奇行を理解することができず、
しだいに心が離れていき、恋人のもとをはなれた。

そして行き着いた先は、まぐろ漁船。
まぐろ漁船で繰り広げられる過酷な状況のなかで、
主人公は、苦悩する。 そして事故は起こる・・・。

最後には途中ででてきた、
話の伏線と結末があわさり、
意外な展開をむかえるのも面白さのひとつ。

感想

この作品のテーマはやはり「愛」なんだと思う。

作品の最終的な結末は、
なんとも言えない歪曲した「愛」のカタチでもある。
それでも、それはそれで「愛」だ。
計画的な・・・。

逃げた主人公が置かれる、
マグロ漁船の現場も非常に興味深い。

海以外に逃げ場のない船の上でももっとも重要なのは
体力でも漁に対する勘でもなく、協調性だ

海に出てしまえば、
現実から逃げることができる。
だからこそ主人公はまぐろ漁船に乗った。

ただ、本土には本土の現実があるように、
海の上には海の上の現実がある。

結局、生きている限り何かから逃げることはできない。
そう思う。

そして、
現実を受け入れながらすごしていた主人公に起こった事故。
その後、主人公は”生きたい”と再度確認する。

それはきっと”死”を体験したから。

だからこそ、
難病にかかる可能性がある主人公の恋人の”死の恐怖”も
受け入れられることになった。

遺伝する難病の恐怖を知るとともに、人の感情の深みを知ることができる作品。
大ヒットしたリングのようなホラーの要素はないが、これはこれで楽しめた。

本気で愛してくれる異性が身近にいれは、
精神を患うことなどほとんど有り得ないとさえ思う。

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